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2024年07月22日(月)

留萌市立病院 身体拘束等適正化のための指針

1.身体拘束等適正化に関する基本的な考え方

留萌市立病院の病院理念のもと『安全かつ良質な医療を公平に受ける権利』において、人権が公平に尊重される権利を保障している。そのため、身体的・精神的に弊害をもたらすおそれのある身体拘束等は、緊急やむを得ない場合を除き身体拘束をしない診療・看護の提供に努める。

<身体拘束の定義>

「衣類または綿入り帯等を使用して一時的に該当患者の身体を拘束し、その運動を制限する行動の制限をいう」 

(昭和63年4月8日 厚生省告示 第129号における身体拘束の定義)

1)身体拘束等禁止の対象となる具体的な行為
  • 徘徊しないように、車いすやいす、ベッドに大幹や四肢をひも等で縛る
  • 転落しないように、ベッドに大幹や四肢をひも等で縛る
  • 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む
  • 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る
  • 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける
  • 車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型抑制帯や腰ベルト、車いすテーブルをつける
  • 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する
  • 脱衣やオムツはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる
  • 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッド等に体幹や四肢をひも等で縛る
  • 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる
  • 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する

「身体拘束ゼロへの手引き」(平成13年3月厚生労働省「身体拘束ゼロ作戦推進会議」改変)

2)身体拘束等禁止の対象とはしない具体的な行為

肢体不自由や体幹機能障害があり残存機能を活かすことができるよう、安定した体位を保持するための工夫として実施する行為については、その行為を行わないことがかえって虐待に該当するとみなす。

  • 整形外科疾患の治療であるシーネ固定等
  • 乳幼児(6歳以下)等への事故防止対策
    • 転落防止のためのサークルベッド・4点柵使用
    • 点滴などのシーネ固定
    • 自力座位を保持できない場合の車椅子ベルト
  • 身体拘束等をせずに患者を転倒や転落、離院などのリスクから守る事故防止対策
    • 離床センサー
    • 本人又は家族の許可を得た所在確認端末装置
      (使用する場合は複数人で検討した上で目的を明確にし、身体的拘束最小化チーム(以下「拘束チーム」という。)・看護部長にその旨を報告し看護記録に記載する)
  • ICUで使用している構造上柵を外すことができないICUベッド
    • 全身管理のため使用しているICUベッドについては身体拘束と見なさない。ただし、4点柵使用目的でICUベッドを使用する場合は身体拘束とみなす。
3)抗精神薬等使用上のルールについて

当院は、不眠時や不穏時の薬剤指示については、院内統一推奨指示・せん妄治療における主剤選択ルゴリズムを作成し対応する。

2.緊急やむを得ず身体拘束等を行う場合の対応

身体拘束等は行わないことが原則であるが、当該入院患者又は他の利用者の生命又は身体を保護するためなど、緊急やむを得ない理由により身体拘束等を行う場合がある。
「緊急やむを得ない」理由とは、身体拘束等を行わずにケアを行うための3つの原則(以下「3要件」という。)の工夫のみでは十分に患者の生命や身体を保護できないような、一時的に発生する突発的事態のみに限定される。安易に「緊急やむを得ない」ものとして身体拘束等を行うことのないよう、以下の要件・手続き等に沿って慎重な判断を行う。

1)緊急やむを得ない場合に該当する3要件の確認

【切迫性】
患者本人又は、他の患者の生命・身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと(意識障害、説明理解低下、精神症状に伴う不穏、興奮)

【非代替性】
身体拘束、その他の行動制限を行う以外に代替する看護方法がないこと(薬剤の使用、病室内環境の工夫では対処不能、継続的な見守りが困難など)

【一時性】
身体拘束、その他の行動制限が一時的なものであること

2)適応要件の確認と決定
  • 身体拘束等は極めて非人道的な行為であり、人権侵害、QOL低下を招く行為であることを考え、患 者の生命又は身体を保護するためのやむを得ない場合に限り、医師、看護科長、担当看護師(夜間・ 休日においては医師・担当看護師)など、複数の担当者で適応の要件を検討、アセスメントした上で 拘束時間又は期間を医師が判断し決定する。
  • 観察(テンプレート「身体抑制使用開始指示 観察・再評価」)を使用し、テンプレートだけでは不 十分な場合は看護記録に残す。
    • 身体拘束実施中は、患者の状況に応じ適宜、観察を実施する(2時間を超えない)
      • 身体拘束が確実に行えているか
      • 身体拘束部位及び周辺の循環状態、神経障害の有無、皮膚状態
      • 患者の精神状態、体動状態
      • 同一体位の持続による局所圧迫部位に発赤や摩擦による皮膚損傷が発生しやすい。上肢においては橈骨神経麻痺、尺骨神経麻痺に留意する。
3)患者本人及び家族への説明と同意
  • 身体拘束等の必要性がある場合、医師は本人又は家族の医師を尊重した十分なインフォームド・コンセントを行い「行動の制限をする為の説明・同意書」に沿って身体拘束等の必要性・方法・身体拘束等による不利益等を患者・家族等へ説明し同意書を得る。また、家族が遠方など同意書記入困難な場合は電話で説明を行い代筆の許可を得て、代筆者の関係・名前を記載する。
  • 身体拘束の同意期間を越え、なお拘束を必要とする場合については、事前にご家族に患者の状態等 を説明し理解を得る。
  • 身体拘束要件に該当しなくなった場合には、速やかに拘束を解除するとともにご家族に報告する。
4)身体拘束者の把握・解除に向けた検討
  • 病棟管理者(病棟科長)は、夜間の身体拘束対象者数を、夜間の責任者(夜勤リーダー)に報告する。身体拘束が短時間でも(夜間のみ、経管栄養実施時のみ、食事中のみなど)、身体拘束対象者として報告する。
  • 夜間の責任者は、総数を翌日の病棟管理者に報告し、管理日誌に記載する。
  • カンファレンスでは、身体拘束による心身の弊害や拘束を実施しない場合のリスクについて検討し、身体拘束を行う場合の拘束内容、目的、理由、時間帯、期間等について評価し内容を記録する。
  • 医師は、カンファレンス等の内容を確認し、身体拘束等の継続、または解除の有無を指示する。
    • 身体拘束等の解除基準
      • 身体拘束等に必要な3要件を満たさない場合
      • 身体拘束等の影響から身体的侵襲が出現した場合

3.身体拘束等適正化のための体制(委員会の設置)

1)設置

当院は、身体拘束を適正化することを目的として、身体拘束適正化委員会(以下「委員会」という。)を設置する。

  • 委員会の管理及び運営に関する設置要綱が定められている。
  • 委員会にて、身体拘束等の状況・経過についての事項を年4回以上開催し適正に行われているか確認する
  • 拘束チームからの報告及び審議事項を確認する。
  • 発生した身体拘束について、身体拘束等のマニュアルに沿って適切な手続き、方法で行われているかを確認する。
  • 委員会の委員は、院長、副院長、各部長職(医師を除く)、総務課長、医事課長及び院長が氏名する者により構成する。

4.身体的拘束最小化チームの設置

1)設置

当院は、身体拘束を適正化することを目的として、拘束チームを設置する。

  • 拘束チームは、1ヶ月に1回以上開催する。
  • 身体拘束等のアセスメント評価が適正であったか検討する。
  • カンファレンスの内容も含め、早期の拘束解除に向けた取り組みが適正であったか検討する。
  • 身体拘束等に関するマニュアルを更新する。
  • 拘束チームで検討した内容をまとめ、身体拘束適正化委員会に報告し評価を得る。(年4回)
  • 拘束チームは認知症ケアチームが兼ねて活動する。

5.身体拘束等を行わずにケアを行うために(3要件)

1)身体拘束等を誘発する原因の特定と除去

行動には必ずその人なりの理由や原因があり、ケアをする側の関わり方や環境に問題があることも少なくない。そのため、その人なりの理由や原因を徹底的に探り、除去するケアが重要である。

2)5つの基本的ケアの徹底

5つの基本的ケア

  • 起きる
    人間は座っているとき、重力が上からかかることにより覚醒する。目が開き、耳が聞こえ、自分の周囲で怒っていることがわかるようになる。これは仰臥位で天井をみていたのではわからない。起きるのを助けることは人間らしさを追求する第一歩である。
  • 食べる
    人にとって食べることは楽しみや生きがいであり、脱水予防、感染予防にもなり、点滴や経管栄養が不要になる。食べることはケアの基本である。
  • 排泄する
    なるべくトイレで排泄してもらうことを基本に考える。おむつを使用している人については、随時交換が重要である。おむつに排泄物が付いたままになっていると気持ちが悪く、おむつをはずす等といった行為に繋がることになる。
  • 清潔にする
    きちんと風呂に入ることが基本である。皮膚が不潔なことがかゆみの原因になり、そのために大声や夜眠れずに不穏になることがある。皮膚をきれいにすることで本人も快適になり、周囲もケアしやすくなり、人間関係も良好になる。
  • 活動する(アクティビティ)
    その人の状態や生活歴にあったよい刺激を提供することが重要である。その人らしさを追求する上で心地よい刺激が必要である。
3)よりよいケアの実現を目標とする

体拘束等廃止を実現していく取り組みは、院内におけるケア全体の向上や生活環境の改善のきっかけとなりうる。「身体拘束等廃止」最終ゴールとせず、身体拘束等を廃止していく過程で提起される様々な課題を真摯に受け止め、よりよいケアの実現に取り組んでいくこととする。

6.身体拘束等を行わずにケアを行うために(3要件)

身体拘束等適正化のための研修会を年1回以上開催する。なお、他研修プログラムにおいて身体拘束等の適正化について取り扱った場合は、本研修を実施したものとする(例:虐待防止に関する研修会)。新規採用時には必ず実施することとする。

令和6年6月26作成

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