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2026年09月30日(水)

【シマエナガ通信】第11回 診断学・臨床推論とコンピュータ(AI)

秋分の日が過ぎ、朝晩の冷え込みが気になる時期になってきました。
さて、医療を大きく診断・治療の2つのカテゴリーに分けた場合、若手医師にとってより困るのは診断だと思われます(1)。

現在では医療の幅広い分野でエビデンスに基づいたガイドラインが作成・整備されています。
したがって病気(疾患名)が分かればその病気に対する標準的な治療法に辿り着くことは難しくありません。
一方、診断は「目の前の患者さんで何が起こっているのか」を症候や過去の病歴などから仮説を立てて、それを検証していくというプロセスです。
この診断のプロセスを臨床推論または診断推論といいます。 医学とテクノロジーの進歩によりさまざまな臨床検査や画像診断が可能となっていますが、適切な診断仮説なしにやみくもに検査をしてもかえって混乱するでしょう。

実は医師が臨床の現場で診断したり判断したりする過程は極めて複雑で、論理的な部分と直観のような非論理的な部分が渾然一体として進められるものだと考えられています。 東京医科歯科大学教授(当時、現榊原記念病院院長)の磯部光章氏は「話を聞かない医師 想いが言えない患者」という著書においてこう述べています(2)。

「臨床診断がコンピュータになじまないことのもう一つの大きな理由は、正確な症状や経過に関する情報が医師と患者のコミュニケーションの中で確認されていくことによっている。
コンピュータに一問一答式に入力される情報では正しい診断には至らない。それに加えて患者の表情、仕草、話し方など非言語的な部分も含めてすべての情報を織り込んで診断に至るわけである。
ときには患者の『嘘』を見破らなければならないことだってある。まさに診療に必要な情報は人間的なアナログ情報そのものなのである。

当然その複雑な過程には医師と患者が人間同士として織りなす心理的な変化が絡んでくる。
私も磯部先生とまったく同感なのですが、この本が発刊されたのは2011年です。
その後生成AIが登場し、改良を重ねている現在においても医療従事者あるいは受療者である一般の方々は同じ認識でいるでしょうか。
この疑問に千葉大学名誉教授の生坂政臣氏が答えていました(3)。

詳細は割愛しますが、生坂先生は「診断推論の本質は、単に『情報を集めて正解を推測する』ことではなく、『何が重要な問いか』を決定する作業にある。」と述べた上で、「AIへの精通は、これからの医師にとって必須のスキルとなるだろう。 しかし、医師自身の診断推論力は不要になるどころか、より磨き抜かれた質が問われるようになる。」と断言していました。日々の臨床においても臨床推論(診断推論)は奥が深く知的刺激に満ちています。若手医師に限らず私も学び続けたい重要なテーマです(高橋)。

【参考】
(1)ジェネラリストのための内科診断リファレンス、第2版、医学書院
(2)話を聞かない医師 想いが言えない患者、集英社新書
(3)日経メディカル Online:

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/cadetto/adjuvasp/202603/592251.html

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